バベルの塔は製作者の頭の中では?<バベル ネタバレなし編

いつか観に行こうとは思っていたが、たまたま早く観ることができたバベル。ひと言で言えば「ウンコ映画」に尽きる。そりゃ、 これじゃあオスカーもカンヌも取れないだろう。 20/100点。
この映画は、ネタバレなしでは特に感想が書きづらいのだが、まずは私なりの前提から語っておこう。悲劇を描くにせよ、 もどかしさを描くにせよ、観客にスジとして「なるほどねえ。そんな状況ならそう感じるのもしょうがないよね」と思わせる説得力が、 私にとっては映画や演劇を観る時の最低限の基準である。アンフェアもローレライも、このブログでは比較的低めの評価をしたが、それでも、 この2作は、最低限、読者に「スジ」を「納得」させようとしていた。その努力は、「オナニー作品」にしないようにするために、 きわめて重要だ。
しかし、この映画は、始まりからして「なんじゃそのキッカケは」と言わざるを得ないものであり、そのキッカケをスタート地点として、 舞台の一つのモロッコでは「そりゃもう大騒ぎさ」となる。その一方で、別の舞台であるアメリカ←→メキシコでは、これまた「なんじゃそりゃ」 というキッカケで「そりゃもう大騒ぎさ」となる。しかも、このキッカケは、モロッコの事件とは何ら因果関係がない。←ここが重要。
さらに、もう一つの舞台である日本でも、「なんじゃそりゃ」という人間が、「なんじゃそりゃ」という行動をとり、「なんじゃそりゃ」 という終わり方をする。この日本での出来事も、モロッコの事件とは何ら因果関係はない。←ここも重要。
ということは、この映画は、私にとっては「なんじゃそのキッカケは」で「そりゃもう大騒ぎさ」が3つ並行して進む(時間差はあるが) ドラマである。そこで起こる出来事の間に「因果関係」があればまだ映画やストーリーとしてのおもしろさを感じることもできたのだが、 それすらもない。私が今まで観た数少ない(笑)映画の中では、タランティーノの「パルプフィクション」のそれぞれのエピソードを、 リアリティを取り、なおかつそれぞれのストーリーが「観てて痛々しい」展開となったものだと考えれば近いか。
というわけで、3つのドラマの間に「因果関係」はなく、観客は、それぞれのドラマを見てどう「感じる」 かという点だけに集中させられる。ということは、観客にとっては、この映画の焦点が、「物語としてのスジ」から「印象」 にずれていくことになる。
ふむ。なら、「受ける印象」としては、この映画は「名作」なのだろうか。いいや、「否」と言わざるを得ない。なぜなら、例えば、 この映画が「人間の救いようのなさ」を描いてるとしても、脚本的に、あるキャラに対しては非常に「甘い」エンドとなっており、 あるキャラについては非常に「厳しい」エンドになっているからだ。各キャラの心の動きにも、私には「あぁ、だからこう動いたんだろうなぁ」 と思わせる「必然性」がないわけで、ゆえに、各キャラの扱いも、 単に脚本が恣意的にあるキャラと別のキャラを不公平に扱っているようにしか見えない。
簡単に言えば、脚本がキャラをいじる「神」になっており、それが極めて嘘くさいのだ。 少なくとも日本パートには全くリアリティがない。
「そういうのも含めて、この映画の良さなんですよ?」と思う人は、こんな映画より、 「実際の現実」の方が、よほど「良い教材」であることに気づくべきだろう。そう言わざるを得ないほど、 日本パートのリアリティはウンコ級であった。こんなリアリティのないストーリーで「現実」を学べるとしたら、そいつは「現実」 を知らないという意味で、とんでもなく痛いヤツだとしか、私には言いようがない。何で今どき女子高生がルーズソックスなんかねぇ???? 観てる方がむちゃくちゃ恥ずかしいんだけど…(苦笑)。日本スタッフも、そのくらい助言シロヤ…まったく。 他にもあるのでネタバレあり編に書くが、例えばこういう点に象徴されるように、細かいところが「雑」なのである。私としては、 いかにも「あぁ、外国人が見た『退廃』ニッポンの『イメージ(偏見)』だよね?。 でも現実はかなり違うんだがなぁ?。日本のこと知らないでしょ?(゚σ ゚)ホジホジ」なのである。 日本パートがこれだけ雑だと、モロッコパートや、アメリカ←→メキシコパートも雑なんじゃないの?と推測せざるを得ない。
複雑な現代、人間のどうしようもなさ(ある意味で「原罪」と言っていいだろう)、心の大切さなど、 丁寧に描かなければ単なるオナニーにしか見えなくなりがちな、微妙なテーマを扱っていると推測される本作品(テーマがあるとすればだが) において、設定やリアリティが「雑」というのは、致命的な欠陥だ。
というわけで、王様は裸だと言ってしまおう。単なるオナニー映画にしか見えない。この映画をほめている多くの人は、 この映画のいい点を必死に見つけようとしているようにしか見えない。そりゃ心がつながってよかったね(苦笑)。
日本でのキャッチフレーズが「届け、心」というのもイタすぎる。こんな映画でもみんな観てほしい!じゃないと興行失敗になる! という、製作者サイドの心が「届け」とでも言いたいのだろうかね。
次回作は「バベル2:みな、わしをほめよ!神になったイニャリトゥをな!うわ~っはっはっはっ!」にでもしたら?
「盗~んだバイクで走り出す~♪」を聞いて、「バイクを盗んだくらいで何が悪いの!」と思う人には、この映画は向いているだろう。 「盗んだことは盗んだことだろ。むかついたからってバイクを盗んだことを歌にごまかして正当化するって、ただの甘ったれだろ?成長しろよ。」 と思う人には、この映画は向かない。
バベルの塔ができたからこそ、人間はお互いに分かり合おうとする。言葉がわからない、言葉だけではわからないからこそ、 人間は言葉や心を尽くすのだ。こんなウンコ映画で、そんなことを語ったつもりになってもらっちゃこまるし、 わかったつもりになってもらうのはもっと困る。
というわけで、かなり燃えさかる投稿になっちまった。
追伸:銃規制を促す映画としてはなかなかである。アメリカで、全米ライフル協会がこの映画を観て何も運動を起こさなかったのだろうか。
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